第III相試験において、BRCA変異を有しない患者へのベリパリブの効果を確認
要約
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでは、化学療法とPARP阻害薬ベリパリブでの初期治療において、高異型度の転移漿液性卵巣がん患者の無増悪生存期間(PFS)が有意に上昇したことを示す、VELIA試験の結果を報告した。
第3相ランダム化試験は、GOG 財団の研究者により主導され、10カ国、202の施設で実施された。試験結果は、本日New England Journal of Medicine誌に掲載され、欧州医療腫瘍学会(ESMO)会議2019で発表される予定である。
BRCA変異を有する患者に対し、化学療法とベリパリブによる併用療法を受けた患者の無増悪生存期間中央値は34.7ヶ月であったのに対し、化学療法とプラセボ療法の患者では22ヶ月であった。同様に、相同組換え(HR)修復異常がある患者の無増悪生存期間は、併用療法群の31.9ヶ月に対し、プラセボ群では20.5ヶ月であった。
なお、すべての試験参加者での無増悪生存期間中央値は、併用療法で23.5ヶ月、プラセボ群では17.3カ月であった。
「これは、新たに卵巣がんと診断された患者を対象にPARP阻害薬を化学療法と併用した初めての臨床試験で、PARP阻害薬の有益性がさらに確認されたことにより、卵巣がんの補助的化学療法としてベリパリブが新たに使用できることが示された」と、婦人科腫瘍学・生殖医学教授であり筆頭研究者であるRobert L. Coleman医師は述べている。
アメリカがん協会によると、卵巣がんは女性生殖器系のがんの中でもっとも死亡数が多く、2019年には約22,530人の女性が新たに卵巣がんの診断を受けると予測されている。治療法は進歩しているが、患者の75%以上で3年以内に再発が認められる。
卵巣がんの約20%がBRCA変異を示し、これとは別に30%以上がHR修復異常を有するが、いずれも正常なDNA損傷の修復を妨害し、代償性DNA修復経路を標的にするPARP阻害薬は、これらの変異を有する腫瘍を脆弱にする。試験の結果では、BRCA変異がある腫瘍を有する患者でもっとも顕著に効果が現れたが、BRCA変異を有しない患者に対するPARP阻害薬の効果も確認された。
試験では新たに高異型度の卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がんと診断された患者を対象とし、血液および組織のサンプルを分析して、BRCA変異や相同組換えの状態を確認した。
2015年7月から2017年7月まで1,140人の患者を、化学療法とプラセボ群(対照群)と化学療法とベリパリブによる併用療法の群に無作為に割り当てた。併用療法ではベリパリブ併用のみの群と、化学療法とベリパリブの併用療法の後、さらにベリパリブで維持療法を続ける群(全期間ベリパリブ使用群)に無作為に割り当てた。
ベリパリブの併用療法は一般に忍容性が高く、予期しない毒性は認められなかった。ベリパリブの有害事象は、化学療法との併用時における貧血と血小板減少ならびに嘔気、全身倦怠感であった。
「今回の試験は、ステージ3またはステージ4の患者で、一次手術を受ける予定の患者および術前補助化学療法を受けている患者のいずれも対象としたため、毎日クリニックで診られる患者を反映していた。これらの結果は心強いものであり、新たに卵巣がんの診断を受けた患者の多くに適用できる」とColeman医師は述べている。
今後の研究では、主に抗血管新生薬、免疫療法、あるいはその両方などを調査する予定である。ベバシズマブも最大投与量の化学療法と併用することができる薬剤であり、ファーストラインでの使用、あるいはベリパリブとの併用療法も視野に入れていくと考えられる。
本研究はGOG財団より支援を受け、AbbVieより資金提供を受けた。
翻訳:そら
原文:MD Anderson Cancer Center
0コメント